こんにちは。
目黒駅近くのリベラルアーツ法律事務所の弁護士の松木隆佳です。
昨日,今日と,ある刑事事件の件でニュースはにぎわっていますね。
このニュースを通じて,改めて刑事事件の弁護というものを考えさせられました。
被告人に裏切られた,とも報道されていますが,私も,被告人が無罪を主張していたのに,罪を途中で認めたということがあります。
弁護士は,基本的に,被告人を以前から知っているということはなく,逮捕されたときに初めて知り合います。そこから,被告人と何度も話をし,信頼関係を築き,事件の話をしてもらいます。
警察が,裁判所の逮捕状という許可状をもって逮捕されている以上,そのように判断した何らかの根拠があるはずです。被告人が無罪を主張していた事件では,それを確認し,被告人と話をし,それら警察が根拠とするものについて,矛盾なく被告人が説明できるのか,一つ一つ確認していきます。被告の話に理解できない部分,疑問があれば,私は素直に聞いていきました。それでも,きちんと辻褄の合う説明を受けると,弁護士としては,被告人の弁護人である以上,被告人の説明を信じ,無罪を信じます。
今回の事件の弁護士も,ベテランの先生ですから,そのようにきっちり対応したうえで,無罪と信じて対応されていたのでしょう。
弁護士として,それを到底批判することはできないと思います。
極端な話ですが,私が担当した被疑者に,自分がやったことは間違いないが,取り調べには完全黙秘をするので,無罪主張をしてほしいと言われたことがあります。
正直,私としては,弁護士としてではなく,社会人として,非常に悩まされました。
しかし,刑事事件では,仮に被告人が自白をしていたとしても,証拠がなければ有罪にはならず,無罪ということになります。ですから,このような事件では,証拠がなければ,無罪と信じて無罪主張をすることも,弁護士として全く問題がなく,それが弁護士の役割なのです。
結局,何度も話しているうちに,その事件では,被告人が認めて謝罪すると方針転換したため,私の悩みは徒労にすみました。
このように,刑事弁護人の役割というのは非常に難しく,常に悩まされるのです。